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ksk@ぴよによるノンジャンルみだれ手記

2023/11/3の雑記 春ゆきてレトロチカの感想

スクウェア・エニックスアドベンチャーゲーム「春ゆきてレトロチカ」をクリアしました。

www.jp.square-enix.com

 

気にはなっていたのでセールのときに買っていたものです。スタッフロールで気づいたんですが佐野岳さんが出てたんですよね。どっかで見た顔だと思ってた。

 

ゲームは実写映像を中心に進むアドベンチャーゲームで、歴史ある家に取材に訪れたミステリー作家が主人公です。取材先で遭遇する事件と、その家の過去に起こった歴史上の事件に触れ、プレーヤーは両方の事件を解いていきます。

総合的な感想は「お話は面白かったが、システムは相性が合わないと感じた」といったものです。

 

以下は物語の内容、核心にはあまり触れませんが、ゲームシステム上の仕掛けについてはどんどん触れていきますのでご注意ください。

 

作品を遊んでいて最初に思ったのは「日本語の相性があまり合わない気がする」というものでしたが、プレイ後に感想が整理されました。どちらかというと「最終章のために残していた要素が全体的にプレイ中のノイズになっている」ということだと思います。

このゲームは全体を通読し、全てが終わったと思わせスタッフロールまでを見せたところで更にもう一つどんでん返しを用意する仕組みになっていますが、この仕組みのための様々な仕掛けが「それ以前の章では触れられない扱いになっている」ので、気持ち悪さが残っています。

終章以外のすべての章で、それぞれの事件を解決する主体はプレーヤーであるわけですが、その事件中の「謎」だったり「人物」の一部が、終章に関わるためにそもそも考察の対象にすることができない、というような造りが点在しています。

ゆえに、プレーヤーが気になったポイントについて、そこそこ自由度の高いインターフェースを取っておきながら、実際には「謎を検討し切らない」「甘いところを片づけないまま章が終わる」というものになっています。これらは終章で使用するためにとって置かれます。

「終章で全部をきれいに終わらせる」「エンディング後に終章を置く」という仕掛けは大好物なんですが、それまでのコース料理の残置物がどうにも気になってしまった。一つ一つの章が終わった時の爽快感が薄いのですね。整理しきってないことが残るためです。

 

また、謎解き系のゲームにおいては、プレイを進めていくことによって謎を「整理」していくことで真相に近づいていきますが、このゲームにおいては不要な仮説もすべて一度は生み出すことが必要とされるため、事件編を観る→自分の中で仮説がまとまる→ゲーム中で仮説を整理する→不要な仮説がじゃんじゃん増えてノイズになる、というちょっと困った作りになってます。ミステリーが好きな人ほど混乱するのではないでしょうか。

この仮説の作成はそれなりに時間をかけてインターフェースを操作しますが、作業感が強いため、全体的に退屈な作業でした。

 

そして、映像であることの良さと難点がそれぞれ。実写映像であることは、この作品が狙っていた最終的な謎を構築するのにとても良く、演出はうまく活きてました。
いっぽう、こういった現代描写でファンタジーを行ったり、ミステリーをやったりするときに文章よりも映像であればあるほどリアリティレベルが増していき「これはやや無理があるだろう」という表現が出てきてしまうことがたびたびあります。

この作品でも、文章での表現や静止画+文章のサウンドノベルスタイルの表現ならそこまで気にならないだろうと思われたけれど、映像になってしまうと「それは無理じゃない?」という画が散見されました。

また、単純にゲーム中のカットシーンが多いことは「ゲームをしている」という印象にマイナスで「やるドラ」や「メタルギアソリッド4」のような退屈さも少々。

 

以上、全体的に難点を並べてしまいました。「ゲーム」というよりは「インタラクティブ映像作品」という方向性で触れていく方が近いように思います。

一方でインタラクティブメディアとして考えていくと、ゲームインターフェースはうまく活きているし、新しい形のミステリーの作り方としても良かったと思います。違う時代のエピソードにそれぞれで同じ役者をあてることで、思考にバイアスをかけるというのは面白い手法でした。

シナリオは全体的に良かったですね。小説で読んでも面白そう。

ゲームが大容量化していくとこれからも実写映像を中心としたゲームは増えていくでしょうから、その表現の仕方に注目していきたいところです。