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ksk@ぴよによるノンジャンルみだれ手記

【ネタバレ】FINAL FANTASY X-2.5 永遠の代償 感想

FF10の続編小説を読みました。

 

小説 FINAL FANTASY X-2.5 ~永遠の代償~ (ノベルズ)

小説 FINAL FANTASY X-2.5 ~永遠の代償~ (ノベルズ)

  • 作者:野島 一成
  • 発売日: 2013/12/26
  • メディア: 単行本
 

 

amazonレビューが低評価過ぎて読むのがビビるこの作品なのですが、読む経緯はたまたまブックオフをぶらついていて、ああこういうものがあるのか、と手に取ったから、というものです。

 

後半ではネタバレをしたいと思うんですが、先にネタバレに触れない範囲でこの本の感想を言いますと、小説が上手じゃないです。ほぼそれが感想の全てです。

筆者の野島氏はそもそもシナリオライターの方なので、小説文が得意である必要はないのですが、であれば野島氏を原案として別に小説家を用意したほうがよかったというところです。シナリオライターの方で小説もすごく上手、という方は稀有です。ということで小説文が上手くない、それだけで全体の9割くらいを損しているような気がします。

 

なので、この本についての感想は9割がた「小説が上手かったらよかったんだけどな」で終わってしまうわけですが、それ以外の1割をだらだらとネタバレとして書こうと思っているところです。ネタバレはその前作前々作を含みます。

 

 

ここからはネタバレを含みます。

残りの1割は、そんなに悪くないはずなのにこんなに損するとはね、ということです。

まず確認したいことは「べつにFFXFFX-2も言うほどハッピーな話ではない」というところです。

FFXではユウナとティーダは結ばれないし。

FFX-2ではユウナのキャラが崩壊して、未練から始まる話だし。

じゃあFFX-2.5でティーダがもういっぺん(プレーヤー主観で)死んだからって、そんなに前2作と比べて悪い話の筋じゃないと思うんです。

 

でもFFXFFVIIとどっちがトップだろうか、というくらいFFのナンバリングタイトルの中では人気です。(主にファミ通とかのランキングにおいて)

その理由は当然、ゲームとしての演出が良いからです。雑な言い方をすれば、長い時間をプレイして、仲間たちと旅をして、ラスボスに苦労をして、辛い戦いを経て、そのうえで絵と光で演出されるエンディングムービーを見て、だからプレーヤーの心には強く残るわけです。

 

小説はそれができません。絵も音も流れませんから、だから描写で頑張る。描写で頑張らなかったら、話の大筋でしか評価できません。これは料理されてない素材が美味いかどうかというレベルの話です。

で、話の大筋はFFXFFX-2FFX-2.5でそこまで水準は変わらないと思います。そりゃ、同じ世界観を下敷きにしているわけですから。

FFX系は大体、かなりのエグみのある食材ですから、エグみのある食材を調理せず出せばそりゃエグいに決まってます。ここまで「こんなに損するとはね1」です。つまりちゃんとしたシェフが調理すればよかったんですけど、ゲームシナリオのプロは小説のプロではなかった、ということです。(乏しめてるんじゃなくて、両方できるなんてのはある種の天才なので、仕方のないことで、だからこそ小説家が書けばよかったということです)

 

ということで「こんなに損するとはね2」ですが、時期がよくなかったんだろうと思います。この小説の出版年の2013年って、スクウェア・エニックスが一番ぱっとしなかった頃だと思ってます。

スクウェアエニックスが一緒になってから、かなりの間スクエニは過去作のHDリマスターとかで食いつないでいて、FF14で記憶にあるようなやらかしもあって、なんというか過去の遺産で食いつないだり、一つの企画からこねくりまわしていろいろやってる印象が強かったのです。

だから、おそらくFFX(2001年発売)も「こんなにユーザーの人気が高いなら続編を出せばいけるやろ」という考えが、どこ発祥かはわからないですが、あったのではないでしょうか。だから「2.5」で、最後にはto be continued と表記して、3を出す気満々だった。そのためにHDリマスターにもボーナスコンテンツを追加してわざわざシンを復活させたり、ユウナとティーダの仲を裂いたりしたわけで。

でも、やはり当時のスクウェア・エニックスですから、13のシリーズだよと言っていたものが零式、15と名前を変えたりと企画自体があっちこっち行って、X-3もどっかに行ってしまった(現状は)ということだと思ってます。(2018に新しい野村氏のイラストが出て、ちょっとだけ芽が見えた面もあったようですが)

なんというか、アイデアがあっても実現する目途が全然立たないまま、アイデアだけちょこちょこ出した、その犠牲という感じなのですよね、FFX-2.5は。

 

2020年のいまになって読んだからこそ「あーいろいろあってあかんかったし、読んだ人の怒りもごもっともだよなぁ」なんて思うわけなのですが、同時に「もったいないことしているなー」とも思うわけです。きちんとした小説文が書ける人なら確実にもっと面白く書けるはずです。

 

とはいえ、1996年発売のFF7のリメイクがあんなに面白いゲームになったわけですから、これからFFX-3がめちゃくちゃ面白くなって出ないとも限らないわけなので、ここは期待せずにとりあえず待っておくしかないのではないだろうか、というところです。

出るといいなー。