ご注意
・アニメ版については一切言及しません。
・登場人物個々人についても言及しません。
友人の一部が進撃の巨人をかなり辛辣に評価しておりまして、その勢いたるや「これを読む人間を漫画好きとは認めない」くらいの事を言っていたのですが、我が家には現状進撃の巨人の全巻があります。
自分はこの作品を受け入れられる側ですので、それを踏まえつつ作品について考えてみたいと思います。
・難点:絵が上手じゃない
箇条書きにするつもりで中黒を使ってしまいましたが、結局はこれで一言にまとめられるように思います。
カバー絵を見てから中身の漫画を読んで驚かれた方も多いと思いますし、自分も驚いたんですが、確かに絵と、ストーリーの進め方に非常に難点があります。
特に絵は「キャラクターの書き分けができてない」のが最も困るところです。首から上で書き分けができないならば、服装で書き分ける方法がありますが「調査兵団」という組織を描いているので全員同じユニフォーム。なおかつ言葉遣いも特徴なし。男女どちらか、ということすらよくわからない状況です。
にもかかわらず、ストーリーには多くの人物が登場し、人物と時間と場所、三つの情報が交錯しながら進むので、読解が非常に難解になります。
一読して読めることが望ましい「軽い」メディアともいえる漫画においてはハードルが高い。
・良い点:物語とアイデア
物語については、それが含んでいる謎と、登場人物の置かれた状況の装置が非常によく練られています。
いわゆる「GANTZのファンタジー版」みたいになってしまうことなく、オリジナリティがあり、謎の明かし方も面白い。
またそれを可能にした世界設定、都市の姿なども丁寧に作られています。
そしてなにより「立体機動」という空中戦闘を可能にするためのギミックの作りこみがこの作品の画的な面白さを際立たせています。コミックスの資料ページを見てもその愛が伝わります。
・ミスマッチ
以上を組み合わせるとこうなります。
ストーリー、設定などの下地は十分に面白い
↓(では、物語を描く媒体は何を選ぶか?)
立体機動の魅力を伝える必要がある
↓(漫画が選択される。しかし)
画力が足りない
ひょっとしたら作画と原作が別だったらもっと化けていたのかもしれません。
自分の結論は「読みづらさを保留できるかどうかがダイレクトに評価につながる」というところだと思います。
自分はそれを保留できると自覚していますので、キャラクターの書き分けや時系列の面で読みづらいと思いながらも物語の展開だけで読み続け、面白い、と評価を下すことができます。
これに対する好き嫌いは個々人の問題ですのでどちらでもいいと思いますが「こういうのも漫画の範疇でいいじゃないか」と思うのです。
先日藤子F不二夫先生の「UTOPIA 最後の世界大戦」を読んだんですが、氏の以降の作品と比べると非常に読みづらい。漫画が書かれた時期、過去の作品量に絶対的な差はあるとしても、人、作家は成長するものですし、僕はそれを信じて続きを読むようにしてます。
進撃の巨人も、現代の他の作品と作家が通る道とは決して同じではないとしても、今後に期待をし続けている作品なのです。
- 作者: 諫山創
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/03/17
- メディア: コミック
- 購入: 37人 クリック: 1,425回
- この商品を含むブログ (416件) を見る