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ksk@ぴよによるノンジャンルみだれ手記

SNSとネットを考える2023(X_Twitter/Fediverse/Threads/Bluesky/Discord)

2020年くらいから年に一度くらい記事にしている、Twitter(現X)のメディアとしての性質が変わっているような気がする、というお話。今回の記事で昨年以前の記事に言及はしないので、単に参考リンクです。

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数か月前からX(旧Twitter)が大騒ぎで、それによって「移行先はどこだ」とポストTwitterを探す動きがありました。かねてより10年以上Twitterが覇権的なwebコミュニケーションサービスであったことは気にしていたので「ついに来たか」という感覚ではありました。新しいwebサービスはひとまず触ってみるべしを大事にしているので、実は過去から目にするたびにとりあえず登録して試してみるを続けていました。

 

まずはそれらの2023/8月時点での各サービス雑感から。

 

・Misskey(Fediverse)

機能面では最もとっつきやすく、現代のwebサービスには珍しくギーグ主導です。Twitterを使用していれば用語の呼称の違いはあれど、感覚的にすぐ慣れることができるので、精神的な参入障壁の低さはピカイチです。Misskeyは分散型のシステムであるため、同じ「Misskey」を使用したサービスが多数あります。詳しくはMisskeyのポータルを参照しましょう。

Misskeyをはじめよう

Mastodonユーザーとも交流できる"Fediverse"のひとつですが、MastodonTwitterに良くも悪くも酷似したシステムであったがために、利用者としては敢えてTwitterから以降する必要もなく、規模の大きなインスタンス(Misskeyにおけるサーバーと同義)では話題が散逸し、規模の小さな専門話題のインスタンスでは(その頃はまだTwitterハッシュタグの方が便利だったので)盛り上がるほどの勢いを獲得できていないと感じていました。

Misskeyでは、ある程度大きなサーバーの中でも「チャンネル」等の機能で話題を細分化することができ、Mastodonの上位互換となっています。標準機能でTwitter Deckのような表示もできるため、ちょうど2015年前後頃のTwitterのような使い方ができます。

一方で、基本のタイムラインはMastodonなどと同じくそのサーバーの全参加者の発言を流すようにできているため、アクティブユーザーが1000人を超す=秒速で何十も新規発言が出るような大規模なサーバーでは発言がすぐに流れていき、とてもではないが意味のある言葉を発することができません。

Misskeyサーバーで最も大きなMisskey.ioがまさにそれで、ローカルタイムライン=参加者の全発言が表示されるタイムラインはニュー速VIPのような意味の薄い発言が大量に流れています。その中で意味を与えなくても成立する与謝野晶子レターパックというミームが発達したようです。

Misskey.ioへの急速なユーザー流入は、Twitter内でインフルエンサーTwitterからの移行先として提示したために起こったらしく(自分自身もそれがMisskeyを知るきっかけでしたが)、流入以前=アクティブユーザーが数百人の状態では、参加者が意味ある発言で交流できる状況にあった、ということです。このことから、Misskeyはアクティブユーザー数百人くらいがMisskeyのデザインの限界値と考えられると思います。

Misskey自体は多数のサーバーがありますが、参加者が多いサーバーは同様に意味ある発言が通りづらい環境になっていくようで、しかし同様に利用する友人知人がいない状態では「とりあえず登録者数の大きいサーバーに行く」という選択になるのか、悲しいかな大きなサーバーではカオスな状況が続いています。中堅のサーバーでは、アクティブユーザーが数百人くらいのところで新規登録を打ち切り、サーバー内の秩序を保つ選択が取られていたりするようです。

しかしFediverseの機能の面白いところで、ユーザー同士が直接つながるのであれば、サーバーを越えてフォローすることも可能です。タイムラインの表示方式も任意にコントロールできるので

・サーバー内だけの全参加者のタイムライン

・サーバー内外のフォローしている人物だけのタイムライン

・サーバー内全参加者とサーバー外でフォローしている人のライムライン

などなど、細かいコントロールが可能。さらにサーバー内に「チャンネル」を自由に作成して話題ごとや個人用のスペースを作ることができます。

いいことづくめのように書きましたが、しかしサーバーは個人での運営であるため、サーバー主が負担するか、もしくは参加者合同でサーバー費用の負担が必要です。また、サーバーの負荷が高まれば当然サービスがダウンします。サービス自体が安定を約束されたものではないのです。

そして、標準でスマホアプリ化に対応しているので、スマホでも簡単に使用できますが、恐ろしく電池を食います。

つらつら述べましたが、色々使った中では最も面白いサービスだと感じています。blobcatがかわいい。

 

・Threads

あまり使おう、という気持ちになれていません。最も肌に合わないと感じたのが「投稿を検索できない」ということで、検索がアカウントとそのプロフィールに対してしか効かず、自分の興味についてThreads内で今言及されているかどうかを調べることができません。ここが一番つらい。

とりあえずの登録をしたときにはインフルエンサー、芸能人やAV女優などが優先的に表示されていたので、ゲーム会社や開発者などのアカウントをフォローしまくったり「いいね」をつけまくるなどして表示される項目をコントロールしていく必要がありました。これはもともとinstagramを使用していてアカウントの興味がinstagramに知れていればやりやすいのかもしれないですね。

しかし、そもそもinstagramが写真を基礎にしているサービスなので、これをTwitterのように使うのはそもそも無理があるように思いました。他サービスに比べれば各種公式が参入しているのがinstagramなので、情報集めにもう少し使いやすくなって欲しいところです。

 

・Bluesky

落ち着いた雰囲気ではあるし、話題も検索することができるのですが、まず登録することができません。運よく招待コードをいただき飛び込むことができましたが、日本人登録者の絶対数も少なく、話題が見えづらい。聴いた話ではインディーゲーム開発者などもいるとのことですが……

Blueskyに関してはまだ自分用のチューニングが済んでいるように思わないのだけれど、その糸口を見つけられずにいます。

しかしとにかく招待制であるため落ち着いているのが良いです。落ち着きすぎていて、有用な情報もまた見つけづらいところがまだ成長を期待したいところですね。

 

・Discord

コロナウィルスの行動制限が緩和され五類になったあたりから自分の周りでは勢いを失ったように見えますが、Discordを積極的に使っていたのはもともとオフラインでも活発な方々で、コロナ禍以前からもともとあった人間関係の、オンラインでの交流や遊びのプラットフォームとして使用していた場合にはそのままオフラインへ移行、という感じでしょうか。

サーバーを立てやすいのでその分立ち消えていくサーバーも大量にあり、なんとも運用の難しさを感じます。そして広く募集すれば「荒らし」が現れることもままあるようで、コミュニティづくりの難しさがそのまま表れています。自分自身で管理しなくてはならないという意味で、過去にHTMLで作っていたwebサイトがそのままここにやってきた、という感じでしょうか。

セキュリティはともかくとして機能面では十分であるし、グループウェアとしても使いやすく、使い出のあるサービスだと思います。

 

サービスの紹介は以上で、以下現状の各種webサービスに対する自分の考えです。

 

昨年度と比べて一気にサービスが増えたことで「X=Twitter一強」という状態についに少し展開が見えました。特に各種ニュース媒体での言及もあったためMisskey.ioのユーザー数の伸びが目覚ましく、その性質の急激な変化から「ユーザー数によってユーザーが取れるコミュニケーションが影響を受ける」という体験を目にすることができたのが興味深いです。

Twitterは何年もユーザー数を増やしてきていて、日本では徐々に「まとめブログ系の記事のソースが2(5/おーぷん2)ちゃんねるや発言小町などからTwitterに移行していくということが起きていました。

レイトマジョリティ(の中でも層は分かれると思いますが)の流入によって、大型のサービスの中での強い話題は社会的なモラルを問うもの、政治、思想、スキャンダラスなものが占めていく。一般層が観るレベルになればそこで人気を得るアドバンテージも大きくなり、質の低い情報が跋扈するようになる。この傾向自体はそれ以前のメディア、Mixi、blog、Yahoo!ニュースコメント欄、2ちゃんねるニコニコ動画などでも同様の傾向があったのではないかと思います。

SNSとそれ以前では、それらの「話題」がアルゴリズムによって表示順位をコントロールされる機能の有無があるはずですが、しかし結局のところ、アルゴリズムではそれが人気を取るためのフェイクニュースなのか、重要な一次情報なのかまではわからず、利用者の増大によってこれまでのwebサービスと同様に性質を変えていく、ということが起こったのだろうと思います。むしろ、10年間それがクリティカルなところまでたどり着かなかったのは、アルゴリズムが上手く働いていたのかもしれません。

しかし、2019年頃からは自分自身のTLにおいても様々な政治的ワードが飛び交い、加えてコロナ禍で厚生労働省がメンタルに警鐘を鳴らすまでの状況が日本を襲い、今では「へたにツイートしたらどこから噛みつかれるかわからない」という声も聞こえるようになってきました。

それ以降、イーロン・マスク氏がTwitterを買収、Xと名を改め様々な策を実行していますが、これだけの利用者がいるならば、おそらく(少なくとも自分のようなクラスターにとって)「コミュニケーションのサイト」としては使用することが難しくなり、インフルエンサーたちがしのぎを削りつつ「公式のアカウントの一次情報以外は全てゴシップくらいの信頼度」のサイトへと変わっていくのではないでしょうか。

 

それでは、ポストTwitterとして冒頭に紹介したようなサービスが使えるのか、というとそれは難しくて、各種サービスはあくまで「コミュニケーション」が活発に行われている状態で、ニュース等はX、もしくはニュースサイト等に頼っています。活発であるのはwebのコミュニケーションに慣れた人たちが集まっているからで、これらは過去でいう個人ホームページのBBSやチャット、Mixiの日記欄に近い性質のものです。

そもそもTwitterに政府を含めた各種重要サービスが投稿を行うようになったのは、東日本大震災でも止まらなかったインフラの強さが評価されたのがきっかけだったように記憶しているので、どちらかというとTwitterのようなサービスに公式情報が集まっているというのが稀有な状態と言えると思います。

この記事を書くに当たって、先日、慧眼だなと感じたはてな匿名ダイアリーの記事を探していて、結局見つからなかったのですが、その記事で言及されていたことと同様、もはやX=Twitterは、友達と交流もできて、新しい情報も得られて、なおかつ既存サービスの新着情報も得られるような夢のようなサイトではなくなり、過去と同様にwebを巡回する手順を整えなくてはならなくなってきていると感じています。少なくとも、タイムラインの時系列はもう従来の通りにはならないし、Tweetdeckのようなツールも使えないし、新しい情報はそれが正しいか一つ一つ検証が必要になる。それでも使っていると、ゴシップのような情報も有無を言わさずやってくる。

そうなると、webはSNS以前の形で情報を集める方が効率が良くなっていくのではないでしょうか。地道にニュースサイトを巡回し、公式のニュースを集め、友人とはDiscordや新しいサービスでグループをいっしょうけんめい維持する。Twitterが機能していたのが奇跡的なボーナスタイムであったとするなら、それが崩れたら何か別のもので満足していかなくてはならない。

これまでも各種webサービスは栄枯盛衰、ユーザー数が伸びれば盛り上がり、そして伸びすぎれば衰退していきましたから、Twitterもそのフェイズに入り、そして未来には新たなwebサービスも同じような道をたどると思われます。たとえばユーザー数が肥大化しているMisskey.ioでは過去のTwitter同様、イラスト/写真が最も興味を引くコンテンツとして成立するフェイズに入っているように見えます。

それでも、個々のサービスの成熟過程に現れるムーブメントやクリエイト、情報はとても価値のあるエキサイティングなものですから、楽しみたいものです。

 

そしてもう一点、Fediverseについては従来のwebサービスと異なり、使用が無料で広告を前提としたモデルではなく、サーバー維持をユーザーが直接支援するというのは「どういう利用者が集まるか」という面で面白いと思いますので、その経過を興味深く追いたいと思います。

今年はこんなところです。