paper-view

ksk@ぴよによるノンジャンルみだれ手記

非常に特殊な「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」の感想(ブラッキー(スパイク)の銀幕デビューを祝いたい)

映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」を観てきました。

 

www.nintendo.co.jp

 

非常に特殊な感想を書きます。
これから長々と「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」に登場した「スパイク」についての話を書きます。

「スパイク」は先日に報道があったとおり、欧米版の名前で、日本版では「ブラッキー」という名前がついています。
ブラッキーは「レッキングクルー」というマリオが登場する1985年のファミコンゲームの敵キャラとして登場しました。

その彼が紆余曲折を経て銀幕デビュー。この件について、非常に特殊なルートをたどって彼の情報を吸収した者のみが、妙に深い感慨を抱くことができるのですが、自分がその一人なのでそれについて書きます。自分にとっては「ブラッキー」という改名前の名前の方が馴染みが深いので、そちらで書いていきましょう。

ブラッキーは1985年に登場し、それから全く他のゲーム作品に出てきませんでした。
そんな彼を題材に漫画を描いた人がいます。「鈴木みそ」という漫画家で、ファミ通でルポ漫画を書いていた人です。

なにぶんゲームのルポ漫画というのは版権の関係もあってかまず電子媒体にもならないのでアクセスが難しく、画像引用を多用しているんですがご容赦いただければと思います。

 

90年初頭のファミ通に掲載された「あんたっちゃぶる」の「ゲーム同窓会」の回。ゲームキャラとして全く鳴かず飛ばずブラッキーがゲームキャラクターたちの同窓会に呼ばれ、役者(ゲームキャラクター)を続けるも皆に忘れられているという彼の落ちぶれ話が描かれています。最後にマリオにブチ切れて終わります。


時代進みまして90年代後半。同雑誌(ファミ通)ですが作品名変わりまして「おとなのしくみ」にて「ゲーム同窓会2」が掲載。再びブラッキーが描かれます。なおこれまでブラッキーの実際に発売されたゲームへの登場は一切ありません。ブラッキーはまだ見ぬ役のために体を鍛え続け、最後に「俺はゲーム役者なんだよ」と言って役者の道を続けることを語って終わります。

そんな彼にまさかの13年越しに新作が舞い降ります。「レッキングクルー’98」です。ローソンでSFメモリカセット書き換えによって遊べる作品でした。

よって漫画新作が描かれます。ブラッキーのエピソードでまさかの前後編。悪役として13年ぶりに役者出演を果たしたブラッキーは、変化した現場に完全に呑まれるも、ルイージの采配によりクッパに背中を押され、役者バカとして花を咲かせます。最後に引用した通り「レッキングクルー’98」は大して話題にもなっていませんが、それでもブラッキーの記念すべき二本目の登場作品です。

そしてこの頃には、ブラッキーには完全に逆風が吹いていました。なぜなら「ワリオ」という人間型の悪役がすでに地位を確立しており、さらにその後は「ワルイージ」まで登場していきます。残念ながら「ブラッキー」が活躍できる場というのはもうゲームの業界にはなかったのです。その代わりに、ブラッキー鈴木みそ先生の漫画が好きな人が好きなコアなキャラクターの地位を確立していました。

 

そして2000年代。ブラッキーは役者の道から降り、出版社のバイトとして働いていました。いつの間にか妻と娘ができているブラッキー。役者としての顔を知っている人に拾われ、ゲームへの深い知識を買われゲーム系の出版社で働きます。

そんな彼に三度、役者の仕事が舞い込んできました。

モバイルゴルフ」への出演です。いわゆる「マリオゴルフ」系統の作品でゲームボーイカラーのソフトであり「モバイルアダプタGB」を使用することで通信プレイができます。メインはオリジナルキャラクターですが、いくらかのマリオシリーズのキャラクターが登場する作品です。

しかし、彼は断ります。もう役者ではなく、編集として生きていく。それが彼の決断でしたが――


妻と、そして自身を拾い上げてくれた上司にも背中を押され、新たなキャラクター性を加え、彼はゲーム役者として表舞台に舞い戻ります。役者バカとして描かれたブラッキーの物語はここで終わりとなっていました。

 

なお、以降、ブラッキーは2013年の「ファミコンリミックス(の中のレッキングクルーステージ)」と2015年の「スーパーマリオメーカー」に登場しています。この頃にはこれまで記述した漫画に(自分のような)妙なファンが付き、ゲームにブラッキーが登場するとファンは「ブラッキーに仕事がきた!」とちょっとテンションが上がるということになりました。
しかしブラッキーは「スマッシュブラザーズ」シリーズへの登場もなく、以降も鳴かず飛ばずの時代が続きます。
キャラクターとしてワリオワルイージのほうがはるかに有名になり、誰もがその存在を過去のものとしていた――

そんなとき、ニュースが舞い降ります。「ブラッキー」が欧米名の「スパイク」に変更されるというニュースです。

 

www.cnn.co.jp

 

すわ!! これは!!! ブラッキー!! 映画出演!!!!!!
自分のような特殊なブラッキーファンは沸きに沸いたのです。

 

果たして彼は登場しました。それはもう、華々しく。マリオとルイージがもと勤めていた会社の上司として。
ああ、きっとブラッキーはまた、この撮影のときガチガチに緊張していたに違いない。
大スターであるマリオやピーチ、同じくあの頃よりもっとスターになったルイージクッパドンキーコングたちと同じステージに立つなんて。
それでもきっと、古くから彼を知る友人たちに背中を押されて、磨き続けた演技で現場を魅せたんだろう。

彼はゲームキャラクターデビューから実に38年の時を経て、それはもうワリオワルイージよりも早く、映画にデビューし、名脇役として活躍したのです。
パンフレットにも公式サイトにも特典冊子にも微塵も名前が登場しないけど、それでも彼はマリオファンたちに強く強くその存在を刻み込んだんです。


よかったなぁ、ブラッキー。本当によかった。本当に……!!

 

書きたいことは以上です。