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ksk@ぴよによるノンジャンルみだれ手記

【ネタバレ】「天気の子」感想

「天気の子」を観ました。

 

tenkinoko.com

 

好きな映画だったか。好きでした。一方で、好きになる要素が映画とはちょっと離れた所にあって、落ち着いてから考えて、果たしてこれは映画への感想だろうか、それとも自分が読んで観てきたメディアへの感想だろうか、なんてことを考えていました。

以下ネタバレもあり。

 

 

 

 

 

 

 

様々な人が様々なものを例に挙げてゼロ年代、もしくは「エロゲ」の文脈であることを述べていましたけれど、自分が最初に思い浮かべたのは「イリヤの空、UFOの夏」でした。(小説版しか読んでない)

 

 

これを読んだのは確か大学生~大学院生の頃。刊行が2001~2003年なので、発売から少々経ってから。特に大食い対決の部分の描写力が凄まじくて、文字の力を思い知った一つの本でした。

 

ゼロ年代」とか「セカイ系」とくくることはできるんだけれど、これらの作品のエネルギーに触れるにあたって大事なことのなかに、受け取り手の精神的な成熟度、立場みたいなものも多分にあるんじゃないかと思っています。

精神的な成長の過程でだんだんと自分と他人、または世界とが分化していって、世界は自分がいなくたって勝手に進んでいくし、または狂気に満ちているし、自分にとってもっとも大事な人、家族や恋人や友達だって自分とは全く違うものでどうにもできないものである、ということを受け入れていく。

 

だから、この頃の物語の主人公みたいに「世界と自分(の大切な人)が分離していない」というキャラクターにめいっぱい没入することができる時間というのは、結構限られているんじゃないだろうか。ということを考えていました。

 

「天気の子」の主人公にも、ヒロインにも感情移入できない時期というのは来る。家出少年が出て来たら残っている家族のことが気になって仕方がないし、姉弟だけで暮らしている家庭があったら親族はもっと出てきてほしいしお金の問題も心配だし、児童相談所はもっと早く動くべきだし、決済やお金の受領だって問題は出るはずだし、警察だってもっと早く動くだろうし、なんていうかつまり「そんなに主人公を中心に世界が回っているはずはない」ということが気になっちゃう。

 

だから、自分は「天気の子」を観て面白いと思ったけれど、それは「天気の子」そのものをいい映画だとして面白かっただけではなく、過去に読んだ作品、自分について言えば「イリヤの空、UFOの夏」を読んだときの感覚やエネルギー、そういうものを思い出して好きな映画だと言ったんだと思います。

 

そういうエネルギーを掘り起こすことができる、っていう点で、すごい映画だと思います。精度が高すぎる。一方で「いま」この主人公に没入できる条件が整っている人か、もしくは過去にそういうメディアを通っていない人にとっては「主人公以外」の部分が気になってしまって集中できない映画なんじゃないでしょうか。

 

大人になって、順当に精神は自分と世界とを別の物として分けたけれど、その代わりに失った自己中心的なひたむきさ、大切だと思うものに対する執着、そういうのを思い出させられたという意味で、この映画は好きでした。