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ksk@ぴよによるノンジャンルみだれ手記

【ネタバレ】「きみと、波にのれたら」感想

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以下、ネタバレを含んで感想しますのでご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

色々と映画を観ていたらたびたび予告に現れてきていて、最近多い恋人が死んじゃう系だし、俳優中心に起用されてるアニメ映画だし、主題歌はEXILE系だしこれはnot for me感が高いからスルーかな……と思っていましたが公開後の良い評判が聴こえてきたので観に行ってみることにしました。

 

面白かったです。

 

監督の作品で自分が観ているのは「夜は短し歩けよ乙女」くらいでした。

ということで監督の印象では語れないのだけど、監督のお名前でも話題になっていた気がします。

 

さて、面白かったポイントです。

こういう「恋人が死ぬお話」は、主人公によるパートナーの死の受容と「その先」が定石だと思います。つまり、彼/彼女は死んでしまったけれど、彼/彼女の死を受け入れて、これから頑張っていこうぜ。という構造。

 

この映画ではそれが転倒していて、主人公はパートナーの死に出会うけれど、パートナーは限定条件では主人公とコンタクトがとれる。よって消えない=死を受容できない、する必要がない。

でも、パートナーが死んだという事実は主人公にトラウマを残している。解決すべき課題がある。

 

パートナーの死を受容し、残されたものたちとの中でトラウマを克服するのが定石のところ、パートナーがそのトラウマの克服を手伝おうとする、という妙な関係になっているわけです。

 

が、それが最終的に物語の中の出来事に巻き込まれる形で「パートナーの意に沿う形で」パートナーとの真の別れが訪れ、主人公もトラウマを克服していく。

 

と、引き算で残っているのが「死の受容」ですよね。

この「死の受容」がエンディングシーンです。

主人公がパートナーの死を受け入れ悲しみに暮れむせび泣くところがラスト。

 

死んじゃった、哀しい → 受け入れて前に進もう、幸せだったよね

ではなく

死んじゃった、でも居るわ → 幸せだった、受け入れて前に進もう → 居なくなった、立ち直った → 受け入れる、哀しい

なんです。

 

字面で書くとものすごく悲壮感が漂う話のように感じられると思うんですが、思った以上にポジティブな「解決」のイメージで終わります。それは恐らく主人公とパートナーの関係、周りの人との関係、勧善懲悪、そのほか無数の装置から出来上がっていると思うわけですが、それが成立してる脚本と映像ってすごいな、と思ってしまいました。

 

映像演出、SF(すこしふしぎ)としても面白いと思います。印象としては「ペンギン・ハイウェイ」に近い作品でした。

 

 

さらにもう一つ、パートナーの妹の洋子の位置づけが上手で唸りました。高校生(だと思う)の彼女は出会う度に主人公に対する態度が激しく変わっているのですが、それが奇妙に思う傍ら「あ、こんなに態度が変わるくらい時間が経ってるんだな」と思わせてくれる装置になっていました。

 

特に主人公は前に進もうとしない役どころだし、他のキャラクターは社会人で立場が大きく変動しないので時間の経過が緩く、洋子によって観客に時間を知らせてくれるというのは面白く感じたポイントです。