子どもの頃に買ってもらった小説やライトノベルの類に、ゲーム原作のものがいくつかありました。たとえば魔導物語とか、ファイナルファンタジー2とか。
大部分は子ども時代の自宅の保管環境、スペースその他の事情で手放してしまったのですが、当時に難しくて読み切れなかったものなどもう一度触れたいなぁと思ったことと、攻略本蒐集と併せてテンションがあがったので、この分野を掘り進めています。
いくつか手に入れては読んでいきましたのでご紹介。とはいえすべて絶版本ですので、読んでみたいなと思われたとしても古書店やフリマサイトなどでお探しいただくしかないんですけどね。
・ファイナルファンタジー2夢魔の迷宮(スニーカー文庫)1989年
子どもの頃には挫折した一冊。著者の寺田氏は「ファイナルファンタジー用語辞典」いよるとFF1から3のシナリオを担当された方とのこと。
内容は本編をある程度なぞったものになっているものの、全体的にきっちりとしたファンタジーになっていて、ゲームで触れるよりも人々の描写が重ためです。スニーカー文庫というとライトノベルのイメージがあるけれど「ライトノベル」というよりも「ヤングアダルト」と言われていた時代の、高校生前後くらいに向けた印象です。
こちらを読んでからゲームのFF2に触れたのですが、ゲームの側のテキストの印象がぐっと軽く感じられたので、ゲームとのシナリオの哲学の差を感じます。
上記のFF2文庫と同じ1989年に発売された一冊ですが、こちらはもっと砕けた文体です。本文中に挿絵の代わりに短い漫画が入り、本文と連続した話になっています。よく考えると自分自身がRPGの桃太郎伝説を一作もきっちりとプレイしたことがないのですが、おそらくこの小説版は文庫オリジナルの展開をしていると思います。この本を読んでも桃太郎のことも桃太郎伝説のことも判らないと思います。
文章は昭和の時代を生きていなければわからないギャグとオマージュで溢れており、あと数十年経てば古文書の類になってしまうでしょう。桃太郎伝説とまったく関係のないところで貴重な本かもしれません。
・MOTHER The OriginalStory(新潮文庫)1989年
なんと偶然にもここまで全部1989年。ドラゴンクエスト4~6のノベライズでおなじみの久美沙織先生のMOTHERです。MOTHERの主要メンバーのうちアナの視点で物語が進み、文庫でのスタート地点もアナの加入からとなります。地の文もアナの視点のため、文章がすべてですます調で書かれているのですが、描写は久美沙織先生の各作品を思い描いていただいたほうがよく、各分節が長めでライトノベルというにはやや重たい表現になっています。ご本人がオリジナル展開をしているとおっしゃっている通り、こちらもゲームとは異なる展開になっていますが、久美沙織先生らしい描写がたくさん読めます。現代だとややジェンダー面で物議をかもすかもしれないですね。
近代、例えばファミ通文庫以降などは顕著だと思うのですが、ゲームが積極的にメディアミックスされるようになってからはゲーム本編とほぼ同様のノベライズがされていますが、それより以前では小説版は小説版独自の展開がどの作品も多いように思います。
近年だと思い当たるのは宮部みゆき先生の「ICO」ですが、この傾向はゲーム自体が高度化していき、原作をそのままノベライズしてもドラマ性が保たれるのかもしれません。ファミコンなどの古いRPGはドラマ部分をそのまま小説化するのは厳しそうです。
そういった事情とは別に、近年では原作を汲めていないメディアミックスは批判される傾向にありますが、現代で上記のように原作から離れた描写の小説が出た場合には、受け手の反応はどうなるのかな、と少し気になりました。