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ksk@ぴよによるノンジャンルみだれ手記

社会心理学講義――<閉ざされた社会>と<開かれた社会>(筑摩新書)小酒井敏晶

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読了しました。

 

読みながら考えていたのは、この本の内容は以前に大学教育で専門の基礎的知識として学んだ自分としては全く驚くようなことは書かれていないのだけれども、はじめて読む人にとってはどのくらいショッキングなことなのだろうか、ということでした。

 

ミルグラム実験等も、学び始めた当時は自分にとっては鮮烈だった気がするのです。

ミルグラム実験 - Wikipedia

 

いつの間にか、自分の物の考え方が社会心理学を自然に受け入れるようなものになってはいるけれども、学んだことがない人にとっては特異な、奇妙なもの、受け入れるには少し準備がいるようなものである。

 

社会心理学を少しでも知っていることで、世の中で起こるショッキングなことは、共感はともかく、理解、そこに至るようになった流れみたいなものを辿ることができるようになるというか。少なくとも「そんなことが起きるなんて、信じられない」という否定はしなくなったように思います。瞬時に「どうしてそれが起こったのか、起こることが自然になったのか」をいくつかのツールから考えるようになった。

 

でも、それは別に望まれてはいない。望まれていないということもまた、いくつかのツールから理解することができる。結果、自分がただ単独に生きるのには便利だけど、自分が他者と関りながら生きていくときには乖離がある。誰かが何か理不尽なことを「納得できない」と思っている、その「納得できない」をもう心の底からは共有できないようになった。誰かの「納得できない」の回路の中身を分析してしまような妙な癖がついた。

 

さて、この本についてはそういうわけで、全体的には素養のおかげで自然に読むことができました。現役の大学生・院生として学んだ時からはだいぶ時間が経っているわけで、改めて現在の自分から、こういう知識をどう活かしていこうか、この素養とどう付き合っていこうかと考えるいい機会となりました。