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ksk@ぴよによるノンジャンルみだれ手記

何が距離感を縮めてくれるのか アニメ映画「バブル」感想

アニメ映画の「バブル」を観ました。

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ネタバレありで感想を書いていきます。

 

本作はネットフリックスと劇場の両方で公開されたようで、映像的に映画館で観る方が適しているというのを観たように思うので、映画館で観ることにしました。

 

観た後の印象としては、正直に言えばあまり心惹かれませんでした。理由はこの作品の要素のどれとも気持ちが近づくことができなかったからではないか、と思っています。

 

作品の要素としてはかなり、これまでに親しんだものが含まれています。
荒廃し水に沈んだ東京、人類にはどうしようもない災厄は「天気の子」の雰囲気に近く、

人類ではない何かが人の形を模して、徐々に人類に近い知性を獲得しつつボーイミーツガールのヒロインとしてふるまう姿は「仮面ライダーMOVIE大戦MEGAMAX」の雰囲気に近く、

ちょっと悪い若者たちがお互いのルールの中で争う姿は「仮面ライダー鎧武」に近く、

主人公が外界の音と距離を置きたいのは「サイダーのように言葉が湧き上がる」で観たし、

そしてヒロインは最後に泡となって消える「人魚姫」である。

映像と音楽が繋がる演出と、アクロバティックなアニメーションは美麗なのですが、これだけ過去に親しんだものとよく似た要素を持ちながら、観終わった後に読後感のようなものだったり、感傷みたいなものがどうにも残らないように思いました。

 

それは冒頭に書いたように、たくさん用意された要素たちとのどれとも距離が近づかなかったからではないかと考えています。

たとえば、主人公たちが楽しむパルクールについては「フラッグを獲れば勝ち」となっているけれど、敵や味方の現在位置や、全体の地図がわからないので、競技性を楽しむことができない。どこまでも身体を見せるだけの素材になってしまっている。どうやらかなり危険なことをしているらしいけれども、水面の赤い渦に呑まれるとどうなるのかもわからない。

ヒロインが言語を獲得していないために意思疎通が図れないのは仕方がないとしても、主人公も寡黙なので、なかなか身の上を話してもらえない。主人公のルーツは判るけれど、今どういう状態で、どうなりたいのか、ということがしっかり語ってもらえない。

この世界がどうなっているのかについて、この世界を生きる人たちはよくわかっているようだけれども、観客としてはどうあればいいのかわからない。

恐らくノベルゲームであれば、もっと前半で独白がどんどん出てきたり、世界の説明に文字で量を割いたりして、主人公たちの「今」にフォーカスしたり、自分の視点を近いところまで持っていけるのかもしれないけれども、映像を見ているだけでは、ドラマの主人公たちを見る観客や世界をさらにその外側から見る人、まさに単なる傍観者に終始してしまって、ヒロインが消えることについての喪失感も得られない。

 

こうなってしまうと音楽や美術に力が入っているポイントも「力が入っているな」とか「絵が綺麗だな」以上の感想がなくて、なかなか親身に感じられない……

 

というのが、自分なりに分析した結果でした。要素はよさそうだっただけに、もう少しお話の描き方が良かったら全く違った感想を持てたのかもしれない、と残念に思っています。