筒井先生のライトノベル。ライトノベルと言ってしまっていいと思う。
薄めの文庫本で180ページ程度。タイムトラベルもの、と言っていいのかどうか。キャラクターの強固な立ちかたと、最後にちょっとした皮肉みたいなものが入っているのが面白いSF。
挿絵がいとうのいぢさん。
前半数十ページまでで手コキで射精させられるシーンがなんどもあって(物語に必要なんですよ、一応)、その描写というか、されてる側のセリフが面白いのと、達した後のあたりの表現が秀逸だと思うけど、それにしたって当該のシーンが多すぎる。
全体としては……SFというよりは皮肉付きコメディというほうがいいような気もする。
・ギンカムロ
美奈川護氏の新作! と思いきやずいぶん前に出てた。メディアワークス文庫の棚ばっかチェックしてたから……不覚。
花火師の物語。
この作品の話をするにあたって「巻末の書評に納得ができない」という話をしておきたいと思う。書評は基本的にお仕事小説についてと、ライトノベルレーベル(メディアワークス文庫が必ずしもライトノベルの括りではないと思うことも不満のひとつ)から一般小説に移ったことが描かれている。
でも美奈川護氏の小説で語るところはそこじゃなくて。
自分は美奈川護氏の小説は「特急便ガール!」を除いてすべて読んでいるのだけども、そりゃ最初はお仕事小説、エピソード毎の人情、そういう感覚が強かった。
けど、この人は「瞬間の臨場感」を書くのがとてもうまい、ということを言いたい。
それを感じたのは一番最初に自分が読んだ「ドラフィル!」で、時間芸術であるところのオーケストラ、楽器演奏をどう描くか、というところで「音の聴こえてくる表現だ」と思ったところから。
「スプラッシュ!」は競艇選手を描いた作品だけども、そのターンの瞬間、刹那を詰める選手たちの圧縮された瞬間の表現の臨場感は競艇の現地に行ったことのない自分が湧きたつものを感じるくらい。
花火はある種、そのひとつの極みと言っていいんじゃないかと思う。
瞬間にかける想いとエネルギー量。見どころはそれだけじゃないけど、確実に見てほしいのはそこ。
人間もすごくよく描かかれてる。そしてそれを彩る場面の色彩が豊か。
このかたの小説は、もっと注目されていいと思っております。