以前に友人のツイートをみていてぼんやりと思った事なのですが、
ゲーム音楽の出版オーケストラ楽譜は「ドラゴンクエスト」「スーパーマリオブラザーズ」「モンスターハンター」で、終わりなんですよね。確か。(あったら教えてくださいまし)
これに対して、エレクトーン、ピアノ楽譜は結構いっぱい出版されてたように記憶してます。
単純に「オーケストラ」となるととたんに数が減って、ファイナルファンタジーですら販売されていないというのは、ソフト本体の販売数から考えると意外な話。
意外な話と思いつつ、
「なぜドラゴンクエストは出てもファイナルファンタジーは出ないのか」
「なぜピアノ・エレクトーン譜は出てもオーケストラ譜は出ないのか」
のあたりにここら辺を解くからくりがありそうです。
そんで「出すためには?」ということを考えていけるとよい。
なぜドラゴンクエストは出てもファイナルファンタジーは出ないのか?
というとつまるところ「選ぶ曲がない」のだと思います。
これって実は全てのゲーム楽曲に共通のお悩みだと思っていて、そのうちでドラゴンクエストとスーパーマリオとモンスターハンターだけがこの問題を突破することができたと考えられる。
突破することができた、とはどういうことか、というと「出版するうまみが出る水準に至った」ということです。転じて、それ以外のゲームタイトルすべて「出版するうまみがない」ということになります。
自分の感覚では「スーパーマリオ」はとにかく物量で押し切った、といったところだと思います。「スーパーマリオブラザーズ」の音楽でようやく「一般的」と言えるレベル。そう、マリオで考えると「ワールド」も「64」も音楽としては知られていないレベルです。
「ドラゴンクエスト」と「モンスターハンター」は最初からオーケストラを志向したという設計と、シリーズすべてで同じメロディーを使用したというところで壁を突破しました。特に前者のドラゴンクエストについては、作曲家すぎやまこういち氏が既に知られた作曲家であったことも大きい。
となると、現状から考えて殆どのゲームは閾値を超えれていないことになります。そして今後も超えることが難しい。
ではエレクトーンやピアノ譜はどうかというと、もう少し増えて「ファイナルファンタジー」「ゼルダの伝説」「クロノトリガー」「聖剣伝説」「サガ」あたりが浮上してきます。
これがどういうことかというと、楽譜販売に当たっては、ピアノ・エレクトーン譜のほうが「利益を回収しやすい」ということだと思います。単純に「演奏機会」で考えた結果といったところでしょう。一人で、室内で演奏するピアノ、エレクトーンでは上記タイトルくらいまでは「利益が回収できる」と考える水準に達することができる。
結局のところ、集団で意思決定の末演奏曲が決まるオーケストラでは、ものすごくメジャーな楽曲でないと演奏されることはできない。そうなれば「ゲームをやらない人が知らない曲」はすべてアウトです。これは「ファイナルファンタジー」ですら対象から外れる世界だから、ゲームそのものの知名度を上げるというアプローチではたどり着くことができないでしょう。
つまり「現状のシステムでは利益が回収できない」ので「利益が発生するしくみ」を根本から問い直さないと、ゲーム音楽の楽譜はこれからもファンメイドの非公式のものでしかないわけです。
「演奏」に関しては、これまでいろいろな団体、会社によって試行錯誤がなされてきました。しかし「楽譜」にはいまのところそれがない。
そこに一歩踏み出したのが「ココカラ」という法人ですが、今のところみている限りでは「手数料率を下げる」という方法になっているので、これって結局のところ、今までと「利益が発生するしくみ」が同じになってしまっている。
(で、ここまで書いたあたりで20分くらい卓上でうんうん考えてたんですけど)
「ムシのいい話だよな」って思われたら申し訳ないんですが、正直な話「楽譜をバラまいてしまう」というのが一番いいような気がします。そして「プロからはお金を取る」という感じ。
というのは「アマチュアは吹きたいもんは自分で作る」し「聴く側はアマチュアコンサートなら無料だと思ってる」のがゲーム音楽コンサートの現状だと思うので、ここのどこかに金を発生させるのはたぶん無理です。
楽曲について何らかのムーブメントを興して、先に演奏機会の方を増やしていく。そうすると、そこに別の機会が発生する可能性が生まれると思います。たとえば同じ局を演奏することについての「コンテスト」であったり、ポピュラー化することでプロが演奏するようになったり、BGMとしての使用回数が増えたり。
仮に「スペランカー」を吹奏楽でやると考えたときに、現状、ゲーム音楽団体は「楽譜はない、作ろう」という判断をしています。今はそれしかないからです。これが「有料で売ってるよ」となったら「買う? それとも作る?」の選択に変わります。無料で手に入るとなっても同じ判断をするでしょうが、作るより楽なので選択する回数が増えるでしょう。
同時に、ゲーム音楽団体以外に効果を発揮できます。一般団体は「作ろう」なんて普通考えません。購入楽譜です。購入基準は上記の通り、集団の意思決定で決まります。だから「無料」くらいでようやく土俵に上ることができます。「この楽譜なら購入費用がいらないよ」となってようやく「じゃあ検討のために音源くらい聞いてみようか」という土俵に上がれる。
で「演奏する」ということになったら、ようやく「じゃあ、既存の演奏音源を手に入れてみるか」とか「原典に触れてみるか」という選択になる。そしてたくさん「演奏される」ことによってポピュラー楽曲となることができ、プロが「じゃあ取り入れてみようか」と考えることができるようになる。このへんまできてやっとお金を回収するところまでこれそうです。
実質これでどうか、みたいな効果の測定は結局、効果が遠すぎて測れないとは思うんですけど、このくらいまでやってようやくじゃないかなぁ、と思っています。そのくらい「楽譜」については、既に慣習ができてしまっている。といったところでしょうか。
もう少しお金の匂いのする話にできるかと思ったけど、想像以上に地味な結論になってしまったなぁ。