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ksk@ぴよによるノンジャンルみだれ手記

個人情報リークをどうやって減らすか

しんざきさんのブログの記事がRTで回ってきました。


正義感で個人情報を晒すことを許容していると、またスマイリーキクチ氏の中傷被害事件と同じようなことが起きると思います: 不倒城

ので、読んで思った事を書いていきます。

主な話題はこちら。

・どうして個人情報を流出させてしまうのか
・「容疑者とされた人の個人情報を出すのはやめようよ」は効かない
・ならばどのプロセスでどうアプローチして抑止するか


容疑者(もしくは、容疑者とされた人)の個人情報が流出するのを、流出させる人への啓蒙で止めるのはほぼ無理ではないかと思っています。
だから手をこまねいて見ていよう、というわけではありません。ストップしましょうのアプローチは効果が弱いから、他の方法を取るべきだと思うのです。

 

この国に限ってなのかはともかくとして、多くの人は法や政治についての仕組みを一定以上理解していません。というとやや厳しめの表現ではありますが、これは「電話の技術的原理を知らなくても電話は使える」のと同じことです。

 

人を裁く法で忘れてはならないのは「こういう罪はこう裁こうねって『みんなで決めた』」という大原則です。
それを決めたということは「罪は裁かれるよ」のほかに「決めたこと以外の方法で裁いちゃだめだよ」も含まれるのですが、後者は理解しなくても、普段の範囲で法の利用にはほぼ問題がありません。ふつう、そういうタブーは犯さないからです。

 

つまり人々が「裁く権限のある人たち以外は、何らの裁きもしちゃだめだよ」という概念を「罪は裁かれるよ」より軽視して考えても社会的には問題がなかった、ということです。


むしろ、それを意識的に抑えるのは難しいことです。なぜなら多くの人は「私」と「罪人」の関係を考えるとき「裁く人」や「社会」までに意識を拡張することは難しいからです。よって悪に対して憤り、自分が正義だと思う人には『自分裁いてはいけないのだ』という意識は希薄だと思います。

ですがここで「私刑で殴ってやれ」とはそうそうなりません。
それはそういった傷害行為に対してはきちんと罪が規定されているからだと思うのです。

漏らす人にとっては「個人情報を漏らすこと」に対する罪の意識はリアルではないようです。殴って身体にダメージを与えたり、身体的時間的拘束を与えたり、金銭的なペナルティを課したり、といったことよりかはリアルさが薄いのだと思います。


よく「その人が自分の心を守るために何を発言しているか」に注目しているのですが、加害者の情報をリークする、という行為の発端はおそらく「不快感」だと思っています。目の前(報道)で理不尽なことが生じたことについての「不快感」です。それに対して、自分の心を納得させるにあたって無意識下で合理的に選択される理由が「(価値観に対する)正義」です。

この正義というのがとても面倒なのは「間違っていない」という点です。この正義を否定することはできません。否定すると「不快感」が晴れないからです。スマイリーキクチさんの件では、中傷を行った人たちは何らかの情報により「不快感」を感じ「正義によって行動した」→「行動の結果が間違っていた」→「正義によって行動したのに正義じゃなかったという矛盾」→「矛盾の否定」という順番で処理して、自分の心を守ったのだと思います。ここで「行動の結果が間違っていた」から「正義によっての行動」を自省するのは難しいです。なにせ「不快感」のために不確かな情報でも「行動」してしまうくらいです。

 

初手の「不快感」と、そこからのプロセスに対する処理なしに「加害者情報のリークはよくないよ」というのは、実質的にはこの不快感を処理できない。

では実質的にどうやって「加害者情報の流出を防ぐか」ですが、この一連のプロセスに着目していくか。
実際に効果があるかどうかは検証できないので判りませんが、
・行動したことに対してのリスクを増す
・行動する熱をそのままどこかにそらしてやる
といいと思います。

 

「行動したことに対してのリスクを増す」には、個人情報のリークが即刻罪になればもっとも早いです。
それで文句を言う人は多いかもしれませんが、国家権力がちょっと割りを喰えば、実質的なリーク数はだいぶ減らせると思います。
大事なのは、それが冤罪かどうかではなく「裁く権限がない人は裁いたらだめ」を徹底することです。」
実は方向性の近いとこでスマイリーキクチさんが「リークしたことによって加害者の罪が軽減されたらどうなるか」とお話されてます。これは敵対する相手のメリットを提示することで個人情報のリークを抑える効果を生みそうです。

 

「行動する熱をそのままどこかにそらしてやる」は、理想的にはこの憤りをもとにスポーツに打ち込んだり、芸術に打ち込んだりすればいいんですが、なかなかそうはいかないです。そこで、プラスの効果を生むかマイナスの効果を生むかはわからないですが「よくないね!」ボタンを設置したらどうなるでしょうか。各種SNSに「いいね!」ボタンが設置されたことによって、それまで書きこまれていた様々な賛辞、感想は定型的「いいね!」にとって代わられました。不快感を感じたときにすぐ押して、自分とともに不快感を感じた人達と憤りを共有できる「よくないね!」ボタン、暗いニュースにセットで設置すれば、ひょっとしたら個人情報リークの書き込み減に寄与するかも。

 

と、実質的に減らすにはどうしたらいいだろうと思っていて、考え付いたのでした。