「しかしMPが足りない」さんの第五回演奏会「MPのない演奏会V 犯人はヤス」を観てまいりました。
場所は仙台! ということで、今回の旅程はなんとレンタカー強行日帰り。移動距離800km以上のグレートジャーニーです。朝10時に出て帰宅が翌3時。ドライバーの皆様ほんまお疲れ様でした。
演奏会の感想を二言で申し上げますと
・完成された独自の舞台様式
・成立経緯不明の謎企画脚本
以上の二点に集約されます。
前者「完成された独自の舞台様式」について。
「しかしMPがたりない」(以下えむぴ)さんは「吹奏楽団」と銘打たれていますが、正直に申し上げて吹奏楽団では考えられない舞台構成がされています。
まず反響板が正板・側板とも設置されていない。普通の吹奏楽団でやろうと思ったらメンバーからのものすごい反発を受けそうです。
音響的にハンデを負うその選択がなぜなされたか。
それは「中央の大きなスクリーンを映像で使用するため」ですね。
ホール制限として、中央のスクリーンを使用するためには反響板をなくさなくてはならない。さらに奥行きが稼げないので、オケピを上げてそこにも奏者を乗せなくてはならない。木管楽器が前に出るのでさらに音響にダメージ。
それだけのハンデを負ってスクリーンを使うのは、ふつうの「吹奏楽団」の選択ではない。まったく別種の舞台芸術としてとらえたほうがよいと思います。
ではそこまでして大々的に流された映像はどうだったのか。
これは大成功です。なぜなら一回も「かみ合ってない」とは思わなかったからです。映像、音楽、舞台上の所作、それらが全部まとまってました。ときに映像が前に出て、時に音楽が前に出て、ときに演技が前に出る、そのスイッチが素人とは思えない進行で進む。
たぶん、相当の構成力、リーダーシップ、バランス感覚がないとここまではできないでしょう。すごいことです。
映像技術もすごいんですよ。一度きりではもったいないくらいだなと思いました。
実は、前回までのコンサートを一部見ていたのですけれど「ちょっと楽屋落ち感が強いな」と思っていました。だからこそ舞台で直接見るとどうだろうかと思っていたのです。そして今回は舞台でみたことがよいのか、映像の脚本がよいのか、それは保留としつつも不特定多数に見せるコンテンツとして完成していたのですから、スタイルは完成されたと言っていいのではないでしょうか。
しかし外から観て不安なのは、Gロッソや四季劇場、AKB48劇場などもそうですが、そのホールの舞台装置全部をつかって独自性を確立したコンテンツは、舞台から外に出られないという弱点が生まれてくることです。
えむぴさんに関しては、今回満員を記録したことによって、確実に次回開催場所という悩みが生じることと思われます。仙台在住の方のお話によると、あそこよりも大きなホールは規模が倍以上になるとか。
新たなホールになると、可能不可能、打ち合わせ、舞台の感覚、すべてが変わってくると思います。
そういったところにどう対応し、独自性を保つことができるか。ぜひ追求し続けていただきたいと思っています。
後者「成立経緯不明の謎企画脚本」について。
チラシにてコラボレーションしたきっかけの一つ「犯人はヤス」というフレーズですが、これをどう料理するかを固唾をのんで見守っていました。
なぜなら、僕が担当するGAMEバンドのサスペンス劇場の脚本よりすごく面白くてしっかりしてたら僕は泣きながら帰りの車でドライバーをよそにヤケ酒しながら管を巻くしかなくなるからです。
結果としては杞憂に終わりまして、なんというか全然方向性が違ってほっとしました。
えむぴさんのステージ全体の脚本の概要はこうです。
「1000年に一度、世界中の「ヤス」が集まり世界一のヤスを決定する大会が開催。優勝者にはあらゆる願いをかなえる「ヤスイフォース」が与えられる。ヤストン教授とヤースは大会に出場。同じく出場する弁護士・ヤス歩堂龍一が何者かに襲われ負傷。その後も出場者は謎の犯人の手により次々と倒されていく。果たして犯人はどのヤスなのか、大会の行方は……」
やろうと思わねーよこんな企画!!!
「犯人はヤス」って縛りがあるから登場人物の名前全員「ヤス」にしちまえってどういう発想だよ! 木を隠すなら森の中か! 逆転の発想か! ライトニングみたいなキャラの名前がヤストニングって自由すぎるだろ! ルール無用か!
取り乱しました。このような内容でお話は進み、お話に合わせて楽曲が演奏されます。
しかし舞台というものは恐ろしいもので、後半、登場人物の名前がヤスの方が正しい気がしてくるのです。構成作家の掌の上です。
一緒に見た人とか最後感動して泣いたって言ってたけどおかしいから、もっと前提のところにすごくすごくおかしいとこあるから。
本当に、どうやってこの企画にたどり着いたのか、頭を抱えました。
あとポートピア連続殺人事件は全く関係ありませんでした。
これ、恐ろしいのは、パンフレットが完全に統制されて作られていることなんです。そういうところまで気を配れる人、もしくは統率されたチームの行動です。すごいよ。
ひとまず、心配していた「自分の脚本より面白かったらどうしよう」は完全な方向性の違いにより回避されました。よかった。
最後に演奏について。
いくつかのスタープレーヤーと思われる方の技術力のすばらしさもありますが、よく体が動いている、というのが大きな感想です。編曲もチームに合わせて適切になされているといった感想で、アレンジを利かせたものもかっこよく、全体的にグルーヴを感じる瞬間が多かったです。僕の体がよく動きました。
出来ればもっと多くの人に見聞きしてもらいたいんだけど、やはり音響面を考えると録音や映像だけでは伝えきらないだろうなぁ、というところです。
楽しいステージをありがとうございました。
次は自分の番ですね。がんばります。