ハーバード大学で人気を博している講義の書籍です。
思考実験や、先人の議論を用いて、バリエーション豊かに「正義」の紹介をします。
主な話題は「正義」なんですが、平等という単語のほうが整理しやすいように感じています。
この書の中にはあまり平等という単語は出てこなかったように思います。
なんらかの平等を求めるときには二つの考え方があります。
結果平等=スタートが平等と機会平等=ゴールが平等の二つ。
この二つで足りるとはとうてい思いませんが、この本の要素を整理するのには便利かと思います。
なぜこの用語を用意したかというと、宗教的な概念の薄い日本ではとくに、正義と言う言葉を語る時のニュアンスが難しくなってくると思われるためです。
神ではなく、集合的な無意識、社会から正義の概念を読みとり引き出すという状況では「正義」という言葉が変動する絶対ではないものだと考えるのは、難しいのではないでしょうか。
前段を述べたうえで、この書ではもちろんなにが選択すべき正義かという思想は述べられません。
正義理論の整理がなされる本ですので、そういうものを求める人は啓発書などに向かう必要があります。
多数の先人たちの考えを得て、自分の中の正義論が十二分に相対化された上で、自分がどの正義を選択するか。
この選択を意識的にコントロールできる人は、そんなに多くないように思います。
これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
- 作者: マイケル・サンデル,Michael J. Sandel,鬼澤忍
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/05/22
- メディア: 単行本
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