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ksk@ぴよによるノンジャンルみだれ手記

【ネタバレ】アニメ「バビロン」感想

アニメ「バビロン」を最後まで観ました。

 

babylon-anime.com

 

以下、ネタバレをしますのでご注意下さい。

 

 

 

野﨑まど、という作家の方については、思うところはありつつ、自分が納得できるほどに各作品を読み込んではないので、このアニメ作品単体でだけ感想を綴ります。

 

残念だった、と思いました。

 

曲世愛というキャラクターの表現は、自分には作品世界中での現実感を持って感じられませんでした。理由は「曲世愛以外のキャラクター」の行動が面白くなかったからです。そのため、8話以降、興味が急速に削がれてしまいました。

 

推察としては、リアルよりの世界観の中で、一組織、一国家、そして世界よりも強い個人を描く、その恐怖を、善悪の倫理を問いながら大きくしていく、という事をしているのだろうか、とは思うのですが、いくら何でも世界も国家も組織も弱すぎる。曲世愛というキャラクターをブーストしていく中で、他のキャラクターたちが弱すぎて現実味を失い、結果、曲世愛の強さが響きませんでした。

 

映像としては非常にショッキングでグロテスクな7話の殺人シーンは、映像こそショッキングでグロテスクではありましたが、曲世愛を堕としてしまったシーンだと感じました。それまで「囁くだけで自死に追い込める、法で裁けない異能力者」だったのが、単なる「猟奇殺人者」に堕ちてしまいました。

ショッキングでグロテスクなシーンを魅せるという代償で、堕ちてしまった曲世愛、さてどうするのか。正﨑善が折れてしまいました。ちょっと言い方は悪いと自覚しているんですが、曲世愛が堕ちたあとも強大さを保つために、正﨑善をより弱い存在に堕とす、という構造に見えました。

 

たぶん、それが成立するためには、主人公(正﨑善)=組織/国家/世界 という図式で観ることが必要なのではないでしょうか。

でも、組織、国家、世界って、個々の個人の集合でありながら個人とは全く違うから組織であり、国家であり、世界なんだと思うんです。だから、正﨑善が折れても、その後組織や国家が曲世愛を、折れた正﨑善に倣って何もできずにいるというのは全くおかしな話だと思うのです。しかも、わざわざ映像証拠まで残してくれた単なる殺人犯を。しっぽどころか全身無防備で現れてくれた相手をただ放っておくなんて、弱すぎて萎えてしまいます。申し訳ないけれど、それだと曲世愛が怖いとは感じることができない。

 

最初はこの作品は、社会派サスペンスだと思って観ていたけれど、政治戦も論戦も選挙戦も途中で投げられてしまってスカされた気分だったけれど、それでも曲世愛の圧倒的な強さを描く、たとえば「悪の教典貴志祐介)」みたいなサイコホラーだったとするなら、曲世愛がただの殺人者でも、作中時間では強く見えるように演出してほしいところだったと思うのです。

それは人によっては通じたのかもしれないけれど、自分は冷めてしまいました。曲世愛が強いかどうか、それを描くための相手がことごとく、置かれている立場や本来もっているはずの能力と比して極端に弱い。

だから、最初にスカされてしまった「曲世愛がその強さの表現でかっさらっていく」予定だったであろう「面白そうな方の要素」が全部宙ぶらりんなことが気になってしまう。愛や善がどうか、というよりも、斎開化周りの話が薄いことの方が気になってしまう。

 

物語への没入の仕方、相性の問題なんだろう、とは思うんですが、自分には合わない作品でした。