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ksk@ぴよによるノンジャンルみだれ手記

「しかしMPがたりない」さんの第九回演奏会を観てきた話

前回の続き。

仙台のゲーム音楽吹奏楽団「しかしMPがたりない」さんを観てきたのさ。

 

lackofmp.webcrow.jp

 

いわゆる曲の感想とか、何の曲やったかとか、そういうのは誰かのブログに……あるんかいな。今日の時点で検索したけどうまく引っかからなかった。

 

さて。ゲーム音楽が演奏されるようになって何年経ったかわかりませんが、アマチュア楽団が「地域」だけでなく「ジャンル」というコミュニティの分け方で演奏されるようになってずいぶん経ちます。世の中には次々に「ジャンル」で楽団が立ち上がり、様々な様相を呈している。

 

さて、吹奏楽やフルオーケストラの規模の楽団には大きな大きな要素がひとつあります。「人数が多い」ということです。

「人数が多い」ということはどういうことかというと「集団」の性質を帯びるということで、つまり、個人とかポップスやロックのバンドとか、そういう少人数のグループとは全く違う傾向が出てきます。会社とか学校とか、そういう大きな集団の意思決定を個人でどうこうしがたいことをイメージしてもらえばよい。

 

楽団には「様式」「様式美」があります。当然、楽団を作る人はこれまでもどこかのコミュニティで「楽団」に参加してきた人だから、前に所属していたところの様式美を多かれ少なかれ引き継ぐわけです。

で、「集団」の「様式(美)」は、それはもう走っているバスや列車みたいなもので、個人の力では簡単に変えることもできないし、大きく進路を変えようとすると予備動作でじっくり変えないと大事故を起こします。だからふつうはそんなに変わりません。

 

こういう諸条件の中で「ゲーム音楽」は音楽的な「様式」からは比較的自由な立場にあります。ロックあり、ケルトあり、管弦あり、ピコピコあり、自由です。

音楽的「様式」での特殊な性質があった中で、集団のあり方としても良い意味で「様式」から離れていた団体がいくつかあり、そのうちのひとつが「しかしMPがたりない」さんです。エレキベースエレキギター、EWIをふんだんに使い、スクリーンを使い映像があり、役者が登場し、物語があり、パンフに遊びが隠されていることもある。ステージそのものに仕掛けを入れる場合もある。

 

どうしてそれが成立したのか? というのは内部の人しか知り得ないし、ひょっとすると内部の人でも知り得ないかもしれませんが、同じくある程度「様式」から自由なGAMEバンドを例にとれば「吹奏楽も好きだったか、舞台芸術が好きな人が中心にいっぱいいた」ということが大きかったのではないでしょうか。だから、MPさんの中にもきっとそういう人材がいたんだと思います。

 

が、通常のこととちがうことをする、ということはそのまま、その設計をイチからしなくてはならない、ということであり、これができるのは高い能力を要します。スタートから終わりまで、まだやったことがないことを想像して、オペレートする能力が必要です。それは完全に創作であったり、もしくは見たことはあるけどやった経験のないことのリバースエンジニアリング。これをできる人が居たのだと思います。いないんですよ、ふつうそういう人はそうそう見つけられない。

 

だから「しかしMPがたりない」さんはすごいんだよ。という話です。

 

自分の話をします。

数年前から、ゲーム音楽の生演奏、というジャンルは新鮮味を感じなくなり、ありていに言えば「飽き」ました。もともと飽きっぽいと自覚してはいて、実際に現地で聞けば楽しむし、演奏すればテンションも上がるんですが、ある日の予定を埋めようか、というときに、今ではゲーム音楽よりも他の予定を優先することが多い。

で、それは同じ時代にゲーム音楽生演奏を開拓していった人達も多かれ少なかれ同じなんじゃないかと思うわけです。前は関西でも関東でも簡単に行き来して、交流を持って、演奏会をやれば褒め合っていた。今は当時ほどいったりきたりしない。

今、残ったのはそれぞれの培ってきたコミュニティ。これは宝ですから大切にする。そしてそのコミュニティを維持するために、ゲーム音楽をやっている。というように理由が逆転した。そういう割合が、あのころ活発にゲーム音楽生演奏に触れてた人達のあいだで、増えてるのではないでしょうか。少なくとも自分はそうです。それにネガティブな評価はしてません。しかしそうなっているから、自分が属している以外のコミュニティに行く理由は小さくなっている。

 

そんなバックグラウンドのなかでも仙台に行ったのは、もろもろの事情があって、前回誘ってもらったのに行けなかった、今後もいける見込みが薄くなるため、行けるチャンスは活かせ、という言ってしまえば「義理」だったわけですが、結果今回も「すごいもの」は見せてもらえた。「どうなるんだ?」のわくわくも「こうなるのか!」のわくわくも貰えた、というありがたさ。

 

長々話してしまいましたが、いってしまえば自分とMPさんは「相性が良い」のだと思います。自分は広く舞台が好きだし、見たことがないものを見るほうが好き。だからそういうものを見せてもらえるのが嬉しい。想像できないことの方が楽しい。と言うことです。ただちょっと文化祭みたいなことをやっているように見えるかもしれませんが、それが事故らない、というのは、ものすごく高い能力で組みあげられている設計があり、それを支える人があり、それが「様式」となった、奇跡みたいなものなので、もっともっとそこを褒めたほうがいいと思うんですよ。

 

ということで、とてもいいものを観れました。ありがとうございました。

 

ここまでとりとめのない文を頑張って読んだあなたには曲の感想もちょっと見せよう。なぜかですます調を辞めるぞ。

第一部。マザー2は我ながら気を抜いて聴きすぎていた。まぁ今更、マザー2はもういろんなとこで死ぬほど聞いたし、みんな大好きなのわかってるし。みたいな慢心。トンズラブラザーズが楽しいのは判ってるし実際楽しかった。結末は「エッ!」ってなっちゃったけど。

第二部。普通音ゲー音ゲーたる曲は選びづらいと勝手に思っている。なぜなら音ゲーピーキーなeスポーツで、文脈を共有できる人があまり多くないと思っているから。うんうん、猫又とゼクトバッハは生演奏勢も安心だ、いろんなところで選ばれている、だけど、それでも「その曲をプレイした人」と掛算すると途端に母数が減って、団内で相当な権力を持っていないと音ゲーは選曲しづらい。と、思う。

って中でEntranceという曲を持ってくるとかちょっと意味が判らない。うーんこの話絶対通じない。どう例えたらいい。寿司パーティーだよって言ってすごい見た目の深海魚(捌いてない)持って来られたって言えばいい? いや喰えば美味いんだよ?

それから削除さんの曲はほぼアルバムで集めているファンなので珍しく曲ではぁぁぁぁんってなったのだわ。

アイマスは昔見たことがあったので同じ道を通ってしまうのか……ってなった。言ってもらえればキンブレ持って最前する段取りを頑張ったのに。いやどうだろうか。

第三部。ここでようやく「あっマザー2とアンダーテイル両方やるって相当あれなんじゃない!?」と気づく。気を抜きすぎ。牛タンとかずんだ餅でのほほんとしすぎていたことをさすがに反省。MPさんのメンバー構成とアンダーテイルの相性の良さにショックを受ける。これはGAMEバンドの抱えてきた「様式」ではできない。

持ち味活かしやがったなぁ(勇次郎顔)

 

と、いう感じ。楽しみました。

 

MPさんはGAMEバンドと数年ずれの中心年代だと思うので、そろそろライフステージが進むころだと思われるので、今後はどうやって演じ続けるのかなぁ、と、独特のステージを見ながら想いを馳せたのであった。余計なお話だ。自分のところの心配をしていろ、ということである。

 

すごく面白かったですよ。

またいつか行くと思うので、その時まで熱を保ち続けていてほしいなぁ、と思います。

おつかれさまでした。ありがとうございました。