paper-view

ksk@ぴよによるノンジャンルみだれ手記

「はしがきシンデレラ」について考えていたことと、これからについての話

はしがきシンデレラ会場 – ~モバマスSS投票イベント~

 

募集・投票期間を含め8/17~9/23の期間で開催した自分が主催のシンデレラガールズ二次創作SS投票イベント「はしがきシンデレラ00」が大きなトラブルなく終了しました。ご参加いただいた皆様、まことにありがとうございました。

 

この記事ではそのイベントの話をしたいと思います。

 

「はしがきシンデレラ」の目標は、

「作者が書いたものがもっと広く長く読まれるようにしたい」

であるという話をここでは書きます。

 

・きっかけ

「一体、どれを読めばいいんだ……」というのが、シンデレラガールズの二次創作SS(以下、デレマスSS)をさがしていた時の最初の感想でした。

 読者としての自分の当時の目的は「自分がよく知らないキャラについて知る」「小説作品として面白いデレマスSSを読む」ということでした。

 

 そんな折に、デレマスSSの「交流会」が開催されると知って、それなら作品を読むにも、自作を読んでもらうにもちょうどいい、応募してみようと思ったのが2017年の冬です。せっかく応募したからには自分も他の作者さんの応募作から読んでみよう、と、開催ページを開いて思ったことが、それまでと同じく「一体、どれを読めばいいんだ……」ということだったのです。このときの交流会は、小説形式の作品で60作ほどの参加があり、それらがずらりと一覧表示されていました。特定のキャラや特定の作者様という「とっかかり」を持たなかった自分には、60作という物量は、選ぶためには多すぎると感じていました。

 

 先に弁解しておきますと「交流会」の機能がよくない、ということではありません。「交流会」は書き手にとって素晴らしいイベントです。それは後段でもすこし触れさせていただくとして、「デレマスSS」全体の視点を取って状況について当時思ったことを整理していきたいと思います。

 

1.書いたお話がすぐ流れて行ってしまう

 Pixiv、掲示板等で発表されるデレマスSSは現在でも毎日かなりのが投稿されており、Pixivだけで考えても、24時間内の新着が(更新を含め)20作以上。とてもではありませんが、自分が読むのに使える時間で追い切れる量ではありません。

 これは読み手にとってだけではなく、書き手にとっても特殊な状況で「一生懸命時間をかけて書いた話ほど相対的に不利」になるということでもあります。「なろう小説」と言われる界隈と同じ、小説投稿SNSのサイトデザインに作者のスタイルが引っ張られる、短く沢山更新する作者が読者を獲得するのに有利な結果になっている状態です。

 

2.キャラが多いからこそ、新しいキャラにたどり着きづらい。

 上述の目的「自分がよく知らないキャラについて知る」ためには、未知のキャラクターが書かれた作品を読む必要があるのですが、183人以上いるキャラの結構な数が自分にとってまだ理解できていないキャラであり、かつキャラクターの組み合わせにはある程度の派閥があります。これがラブライブ!(9人)とかなら一人誰か推しキャラが居れば、作品を読み続けることによって他8人全員にたどり着くことは用意でしょうが、さすがに183人を同じ方法で掘り進めていくことは難しい。たとえば、自分は志希担当ですが、だいたい志希フレ、LiPPS、池袋晶葉あたりと絡む作品が多いと思っています。

 書き手にとってしてみれば、SSをとっかかりに総選挙でプッシュするようなことを考えていくには、キャラによっては非常に厳しい。そのキャラにまだ興味を持っていない、新しい読み手を獲得するのが、同タイトル中であるにも関わらず難しい状況です。すでに人気のあるキャラクターを書く方がずっと読者を獲得できる。

 Pixivではキャラクターでタグ付け等がされると思いますが、検索ボックスに自分の知らないキャラを入れるのは、知らないキャラも膨大だからこそ難しい。選択肢が多すぎて指標がない、選びにくい、と思います。

 

3.Not for Meかどうかわからない

 作品には書き手と読み手の相性があります。テンポ感だったり表現の方向性だったり、これが合致しているものに出会えればとても素敵な事なのですが、それが意外と難しいです。とりあえずひとつ読んでみよう! とノーヒントで開き、それで相性がよくなかったりすることもよくある。せめてヒントが欲しい。けれど、web上に並ぶデレマスSSから、相性がよさそうな作品をさがすのはとても難しい。難しいと感じました。

 読み手と書き手が同じグループに固まっていくのも同じような現象で、「誰か知っている人が書いた」というのは優先して読むべき理由、どの作品を選ぶかのヒントになります。逆に新しい作品をさがすのが難しく、結果として知り合いの輪で作品を回すことになっていくのではないか、とも感じました。

 

 

 

 以上のようなことがあって、無数にあった作品からなかなか自分に合うものを見つけられない一方で、その頃までにいくつかのデレマスSSを書いていた自分としては「自分の書いたデレマスSSがどうやったら広く長く読まれるか」「他のキャラクターに比べて人気を獲得できているとは見えない友人の担当キャラをどうやって総選挙でプッシュしていくか」ということを考えていました。

 

 

ということで、これらを狙ってなにかできないだろうか、ということで考えたのが「はしがきシンデレラ」という催しでした。

 

 はしがきシンデレラで狙っている機能は

 

「現状、図書館状態=目的が無くては選びづらい状態 にあるデレマスSSの場環境に対し『書店の売り場を作る=何らかの基準でセレクトされた、見やすく、数が限定された作品一覧がある状態を作る』」

 

 ということです。そのために下記のようなことを意識しました。

 

A.「表紙&帯文&ポップ」に相当するものを並べる

 タイトルとは別に「はしがき」を用意していただき、この「はしがき」だけで投票できるランキングをやります、というルールにさせていただきました。この「はしがき」には、 読む人の目を引くようなフレーズが設定されていたと思います。読み手にとって、その作品の中身に期待し、知ることができる要素を用意し、それを最前面に置きます。漫画で言えば「表紙」で、CDであれば「ジャケット」に相当します。

 これは、現状のライトノベルジャンルのタイトルがどんどん長くなっていること、小説SNS「カクヨム」等で同等のリード文が設定できる機能があることと同じ、現在のトレンドに従っています。

 

B.数を絞る

 募集当初に、20作以上の場合は予選を設け、本選が20作以内に収まるようにする、としていました。20作という数に根拠があるわけではないのですが、選択肢過多効果を意識しつつ、購買ではなく、アンケートで3つまで選ぶとしたら、というところで決定しました。ルール的に10~20の間で本戦を行うことになりますので、このあたりが妥当かな、と考えました。学術的な知見がもうすこし欲しい部分です。

 はしがき60文字でも、20作ならA4にwordの初期設定でびっしり書いた状態です。このあたりがレイアウトとしても文字量の限界かなと思います。

 

C.ゲーム性を作る/何度も来てもらう

 常にその時点での結果を表示する、複数回投票できることでゲーム性を設けてみました。再度訪れることに意味を持たせ、再度訪れていただくきっかけとしました。

 仮に「はしがき」だけで単純に選んだとしても「選んだ」ならば、その行方、中身は気になるところだと思います。そこに他の人達の投じたポイントも可視化することで、自分の選択がどうだったのかの答え合わせをしたくなるように向けました。そのために、本文アクセスまでに必要なクリック回数も可能な限り最小になるように工夫しました。

 

・まずはできるだけ投票ページに来てもらう

・投票ページに来たら、そのうちの一部は投票してくれるか、本文を読んでくれるはず。

・作者、または作者の誰かに誘われた人は「残り2票」を投じるためにはしがきを読んでくれるはず。

・はしがきを読み、投票してくれたうちの一部はその場で本文を読んでくれるはず

・はしがきを読み、投票してくれたうちの一部は、途中経過を確認してくれるはず

・途中経過を確認してくれたうちの一部は、本文を読んでくれるはず ×n回くりかえし

・最終結果を発表すると最終結果を目にしてくれたうちの一部は、本文を読んでくれるはず

 

 以上のように、イベント開始時点、イベント中、イベント後と、それぞれに作品本文を読んでもらうための布石を置いていました。

 

D.結果を作り、固定して表示する

「ランキングの結果」を作ることによって「実際に人気を得たもの」「For meの期待値の高いもの」を可視化します。

本屋大賞」「マンガ大賞」等のランキングと同じく、ある時点である集団の中のランキングを作ることで「何を読むべきか」に一定の指標を作ることが狙いです。広く読むつもりだけれど、選択肢が多すぎて何を読んだらいいかわからん、というタイプの読者に方向性を用意したいと思いました。

 ここで強調しておきたいことは「ランキングが高い=優れている作品」では必ずしもないということです。結果が数値の優劣の形で出てしまう、というのはこのイベントからして避けられないことですが、作品は読者と作者の相性です。「ランキング一位より、下位の作品のほうが自分と相性が良かったなぁ」というのも、様々なジャンルで皆様に覚えのあることだと思います。

 ここではあくまで「順位をつける」と「はしがきという表紙」を併せて出すことで、読者に一歩を踏み出してもらいやすくする、ということを狙っています。

 そしてそれを「期間を定めて実施したイベントの結果」として固定することで、たくさんの賞賛を得た作品が長く読まれることを狙っています。

 

 以上のように、イベントとしては「はしがきだけ読めばOK」ですが、その中身としては「何度も本屋を訪れてもらい、表紙(=はしがき)を見せて平積みされている売り場を見せ、各作品が『読まれる』ようにする」ということを意識しています。

 

 一方でこの形式の弱点もあります。「交流会」と対称的に、はしがきシンデレラでは感想を貰うことと前提としていませんし、文章の批評も期待できません。読者を参加者ではなく「お客さん」扱いしているため、下手をすれば書き手が傷つくような事態もあり得ます。そういう意味で「交流会」は書き手のための研鑽、交流のためのイベント、「はしがきシンデレラ」は読み手に寄り添った(引いては、読み手に寄り添うことで読者を増やし、作者に資する)イベントと区別できると思います。

 

・これから

 はしがきシンデレラ、は一度で終わるべきではなく、回数を重ねていくことで認知度をできるだけ増していき、認知度が増すことによってランキングの信頼度があがり、読み手に取って有用な情報を提供できるイベントにしていけるのではないか、参加した作品が読まれる回数も増やせるのでは、と思います。二回、三回と実施していくことで、過去のイベント参加作品にもそのたびに少し注目を集めることができます。

 一方でマイナスの機能があり「はしがきシンデレラに興味を持つ読者層」に寄りそう作風に偏りやすい、多様性を失う結果になってしまうことが考えられます。これは開催のレーティングに広がりを与えることで多少回避できると思います。(作品ジャンル限定や、登場アイドル限定など)理想は、はしがきシンデレラだけでなく、異なる評価指標で作られたランキングが複数あることです。

 また、やっぱりイベントを一人できりもりするのは大変だったので、イベントの運営方法を見直してスリム化する、一緒に運営してくれる方を探す、あたりが必要なことかな、と思います。

 

・夢としては

 参加する作者さんが「作者名で」広く知られるところまでいければ嬉しいなと思っています。

 

・反省点/要検討

 実施投票期間→現状はもっと短くてもよさそう。10日くらい

 アンケートシステム→持ち票数はどのくらいが適正かが難しい。いろいろ試したい。

 公正性→自由度とのトレードオフのバランスを再考

 宣伝方法→twitterでスパムフィルタに引っかからないように気を付けること。

 

・次回

 今回は、参加される方にイベント自体をご理解いただくため、そして自分としてはトライアンドエラーのため「まずは実施」ということで、目標は達成できました。今回初めてのイベントに参加いただいた15名の作者の方にはほんとうに感謝していますし、それに報い、この15名が伝説となるように、これからにつなげたいと思います。

 

 ということで、次回は2018年末~年始、レーティングは「2018年中までに発表された作品」というレーティングで実施したいと考えております。詳しい内容はまた後日、twitterおよびイベントページでお知らせしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。