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ksk@ぴよによるノンジャンルみだれ手記

映画「メッセージ」感想(ネタバレあり)

劇中登場の物体が「ばかうけ」に形が似ていることで妙な盛り上がりを見せているSF映画「メッセージ」のネタバレつき感想を書きます。未見は避けたほうがよいでしょう。知らないで見ないと意味ないです、これ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ではネタバレつきの感想です。

なんといっても「映画で叙述トリックを観た!」というのが一番言いたい感想です。

なんでもそうですが、普通にメディアを消費するときって、それぞれの様式があって、作る側もそのルールで自然に吸収できるように組み立てる。そこを逆手にとって、なにかが自然であるように吸収させて、でも実は違いましたー、勘違いした? よく見てね、ルールは破ってないもんね! っていうのが叙述トリック

 

で、我々は普通シーンが連続しているとそれが関連性を持っていると考えるわけで、それらを自然に吸収していってしまうわけです。

作中では「時間が流れではない」というフレーズがきっちりと出ていて、ちゃんとルールを示しているのに、観客としては差し挟まれるシーンは全て、その直後にある主人公の眼ざめのシーンによって「過去に起こったことを夢に見ている」と直感すると。

で、最後にその時系列の認識を崩して、全体を解決をする。これを、観客が、ヘプタポッドの言語を映画を通して「認識していく」プロセスと並行して行うのだから、ものすごい仕掛けなんです。

 

つまり。

作中登場人物は、時系列に従ってものごとを認識していたが、新言語の獲得によって時間と記憶についての認識が変わり、結果的に未来視を獲得する。

観客は、提示されたものごとが時系列と認識していたが、作中の新言語の解析段階によって作中の映像が認識していた時系列と相違していることを認識し、未来視を疑似的に体感する。

 

ということが同時に進行しているわけです。ものすごい仕掛けです。上手に描かないと、登場人物と観客の間が離れすぎてしまう。

 

仕掛けについては以上。

感想としては。「ううーん、面白かったぞ!」という感じ。「いやー面白かった!」ではないです。深く、静かに、面白いお話を見た。出すべき仕掛けを描くことに上映時間の大半が取られていて、力の入れどころがよくわかります。

実際、冒頭の動きはものすごく唐突だし、最後、世界がどうなったかもすごく簡潔。でも、きちんとトリックとその解決が吸収されれば、それだけで満足感はすごい。というか、話としての「めでたしめでたし」に意味がなくなる。(笑)なぜなら既に時間の認識の改変は成功しているから。すごくないですか、この仕掛け。めっちゃチャレンジング。

 

原作にさらに解釈が盛り込まれているようなので、ちょっと原作も気になるところです。

いやあ、面白い映画でした。