言葉にはそれに特有のイメージが付き纏っていて、たとえば「天下り」とかが有名だと思います。天下りについてはwikipediaの概要欄を読むだけでもその中身がわかるので読んでみると良いと思います。
ではお尋ねします。早期勧奨退職後、同人物が関連企業に再就職することは、積極的に規制されるべきでしょうか?
と、いうことで、お読みかどうか、お読みの方が実感されているかどうか、判りませんが、同じ文脈でずっと使われたことによってイメージがつきまとってしまう言葉があります。
JASRAC、という名詞についても、そういうイメージが付き纏っているなと思います。付き纏っていると、単純に叩きたくなると思います。実際にJASRACがどういうことをしていて、それにたいして社会的評価を行う、ということではなくて、JASRACは利権にまたがり利用者権利者から搾取をする組織である、という文脈を積極的に採用し、それを支持する意見を採用して、それに反対する意見に対して消極的になるという、つまるところバイアスがかかった状態になる。
先日話題になったのがこちらのニュース。
またこれによって(いつもの)JASRAC叩きは盛り上がりを見せて、見たことがあるような逸話なんかのツイートもたくさん出てきました。
で、ちょっとツイッターでアンケートをしてみまして。
あなたはある会議室の管理人になりました。会議室のオーナーとは「この会議室を使用する人から料金をとって、その一部があなたの取り分、残りがオーナーの分」という約束をしてます。おっと、誰かが会議室に入ってきて、五分だけ滞在したあと、すぐ出ていくようです。あなたは……
— ぴよ@ととΘωθ-M3ク11x (@kskpiyo) 2017年2月9日
べつだんに回答数が多いわけではないんですが、常識的な結果におさまったな、という感覚でして。質問についてはつまるところJASRACのやっていることってこういうことなんだと思うよ、というのを単純化して例え話にしてみました。
ばっちり法律に規定があればその通りにすればいいんですが、著作権法を見てもそのあたりに細かくジャッジした規定はないと。
となれば、信託している権利者からすれば「いや、そこちゃんととってくれないと自分の取り分減るじゃん」になるわけで、JASRACの動き自体は何ら問題がないはずなんです。
というところまでいくと、今度は「ちゃんと配分されていない」「徴収の方法が乱暴だ」というお話があったりするんですが……これも「同じ話が何度も繰り返し流れてくる」っていうのが、一連の流れを見ているときの印象なんです。
ちなみに、大学院時代の同期が関連テーマで実際にJASRACにインタビュー調査を試みていたんですが、同期の調査結果を口頭で聴いた限りでは「ちゃんと分配しているみたい」ということでした。そりゃそうよね。
じゃなんでこんなにギャップがあるのかなぁ、というと、それは結局のところ、センセーショナルなところだけが何度も何度も語られ続けちゃった結果なんだろうな、と思うんですよね。
ネット上で語られているような杜撰な取り扱いがあったのか。これはたぶん、あったのだと思います。世の中、話題になるために根も葉もないことを書くような人もいますが、それでもそういう事実はゼロではないと思う。なぜなら、試行回数が多いからです。徴収業務はものっすごい回数行われているはずです。そうすると確実に外れ値といっていいくらいのわけのわからないミスケースが出ます。センセーショナルなやつ。
でもやっぱり、その一事を万事にするのとはちょっと違うと思う、と。ミスはミスであったかもしれないけど、それが毎回行われていて、俺も俺も、というさまざまな声を見るのではない。見るのはいつも同じエピソードばかりだ、と。
ということで、じゃあ何が起こっているのかなぁ、というと、単純に嫌われている、もう袈裟まで憎い、ということなんじゃないか、と思うわけですよね。
そもそも著作権法上は取れそうなわけで、預ける身からするとちゃんと仕事せい、なわけだし。それがやりすぎだ、というのなら、ジャッジではなくルールブックを変えなくちゃならない。
そう、著作権法ってもう、インターネットだったりデジタルだったりっていう時代にまったくそぐわないくらい古いのに、これを変えなきゃねという声はぜんぜんない。ルールブックについての議論はないまま、ジャッジがやっていることはおかしいのではないか、ジャッジが嫌いだ、あのジャッジを何とかしろ、と言い続けている。
不健康だなと思うわけです。必要な形に法律を変えるムーブメントなく、あいつが嫌いだ、だけで終わってしまうのはね。このニュース、仮にJASRACという言葉とそのイメージがなかったら、まったく別の方向でとられていたと思うのですよね。
ということで、動きがあるたびにこんな話はしていこうかなぁ、なんて思うのでした。著作権法はもうちょっと今の時代に合致するようになればいいなと思います。