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ksk@ぴよによるノンジャンルみだれ手記

美奈川護「スプラッシュ!」

 この方の小説が好きでして。

 

きっかけは「ドラフィル!」を読んだことなのです。

 

 

どういうところが好きかというと「臨場感がある」というところが好きです。「ドラフィル!」は地方のアマオケの話ですが、これがとてもよかったので、どうしても「響け!」とかも比べて読んでしまいました。

 

臨場感というと非常に難しいのですが、結局のところ文字は五感を直接的に刺激することはできないメディアなのです。にもかかわらず五感にビンビンくる、ここらへんが臨場感ではないかなと思っています。

美味しそうなご飯のシーンが綴られていればおもわず唾が溜まり、恐怖が描かれていれば背筋が寒くなり、そして音が綴られていれば胸が鳴るような気がする。

「ドラフィル!」ではこの音、オーケストラの「場」の臨場感が描かれていたので、この人はすごい作家だ! と思い読んでいたのです。

 

でこの「スプラッシュ!」はボートレーサーのお話。……というほど僕にはこういったレースを楽しんだ経験がないのですが、だからこそこの「ボートレース」というやつのイロハを作中で説明して、その後すぐに描かれるレースの場面だけでものすごい臨場感を感じたという事実がよけいにすごく感じるわけです。見てみたいぞボートレース、と思いました。

こういう表現に出会った時は、自分は決まって、目がそれまで読んでいた文章よりもずっと先を探してしまいます。まだ読んでないのに、頭が先に行きたがっている、という感じ。なかなか出会えません。出会えた時はうれしい。

 

こういう臨場感のようなものはどうやって表現するんだろうと思いつつ、おそらくは言葉のテンポ感と、その場面を構成するキーのような表現が絶妙に組み合わさっているのだろう、と思っています。こういう表現が自由に操れるようになりたい。

ということで、お薦めです。